かゆみで困っている透析患者は多いと言われていますが、よほどかゆみが強い場合は別として、患者の方からかゆみを訴えてくることは、実はそれほど多くありません。しかしよく聞いてみると、「本当はかゆい」「風呂上がりにかゆくなる」と言われたり、不眠の原因を探ったらかゆみだった、ということがあります。
医療用テープののりが残っていたり、長時間テープ剤を貼ったままにしている人では、皮膚がかぶれてかゆみが起きやすくなります。また、透析不足が原因でかゆみが起こるのではないかと考えられるケースもありました。
かゆみは痛みに比べ軽視されがちで、多少のかゆみ程度ではスタッフに迷惑をかけたくないと「言わない」ケースや、また、かゆみを伝えることを「恥ずかしい」と感じている人は多いようです。そのため問診では皮膚を含む全身のチェックや、日常生活についての聞き取りなどを行い、かゆみがないかも確認しています。
かゆみがあると不眠やイライラにつながり、生活のリズムが崩れて体調が悪化するなど、日常生活にも影響を与えます。このようにQOL(生活の質)を低下させるのが、かゆみです。全身のかゆみの他にも、血液透析患者では、シャント部のかゆみや、腹膜透析患者では、出口部のかゆみもよくみられますので、それらの部位のケアを行うことは感染症の観点からも大切です。
少しでもかゆみがあったら我慢せず、体重の変化などを伝える時と同じように、気軽に、「かゆい」と伝えてほしいと思います。どうしても言いづらい場合は、透析手帳に書いておけば看護師が必ず目を通しますので、まずはサインを出すことを心がけましょう。サインを出してもらうことで、私たちもかゆみについて一緒に考えやすくなりますので、是非、遠慮なく伝えて欲しいと思います。
基本は皮膚の保湿(スキンケア)です。もともと透析患者は皮膚が乾燥しやすく、かゆみを起こす原因の1つとなっています。こまめな保湿を行うことは重要になりますので是非心がけましょう。その際、保湿剤は目安として指の関節1本分程度にたっぷり取り、しっかり塗るのがポイントです。
「今日は入浴しなかったから塗らない」という人もいますが、入浴の有無にかかわらず保湿は毎日行ってください。なお、洗いすぎは乾燥肌を悪化させます。よほど汚れている場合以外は、お湯で洗い流すだけでも十分です。