かゆみの発症メカニズムは、大きく2種類に分けられます。1つは末梢性のかゆみで、皮膚にあるかゆみ神経が刺激され、それが脳に伝わることでかゆいと感じるもの。もう1つは中枢性のかゆみで、体内にあるオピオイドという物質のバランス異常によって起こります。
透析のかゆみを起こす原因はさまざまですが、なかでも多くみられるものが皮膚の乾燥です。乾燥といえば冬を連想しがちですが、実は夏場の冷房も空気を非常に乾燥させます。透析患者は肌が乾燥しやすいうえ、冷房によりさらに乾燥が進むと、皮膚の細胞(角質細胞)に隙間ができ、「バリアが壊れた」状態になります。かゆみを伝える神経は、本来は真皮の境界部分にとどまっていますが、バリアが壊れていると角層直下まで伸びてきて、わずかな刺激にも反応し、かゆみを感じてしまいます。また、汗の成分も神経を刺激しますので、発汗もかゆみの原因となります。夏場のかゆみ対策をしっかり行いましょう。
透析のかゆみは外からわかりづらいだけに、どう伝えるかが大切です。「いつ」「どこで」「どんなふうに」「どれぐらい」かゆいのか、できるだけ具体的に説明すると伝わりやすくなります。かゆみが日常的になりすぎてそれが当たり前になっている方、我慢している方は少なくありません。しかし、最近はかゆみ治療の選択肢が広がり、その中から自分に合った方法をみつけることが可能になっています。医師に言いづらければ看護師に、あるいはご家族に、まずは「かゆい」と伝えるところから始めていただければと思います。かゆみの強さを伝えるためのチェックリストやスケールなどもあるので、医師や看護師にご相談ください。